【マーケットレポート-米国】
米国株式市場の見通し
景気、業績は堅調でいずれ落ち着きを取り戻そう【デイリー】
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米国株式市場の見通し
景気、業績は堅調でいずれ落ち着きを取り戻そう 【デイリー】2017年5月18日
【ポイント1】NYダウが急落
4月21日以来およそ1カ月ぶりの安値■5月17日のNYダウは前日比372.82ドル安の2万606.93ドルと、4月21日以来およそ1カ月ぶりの安値で引けました。下げ幅は16年9月9日以来、約8カ月ぶりの大きさとなりました。また、ナスダック総合指数は4営業日ぶりに急反落し、下げ幅は16年6月24日以来の大きさとなりました。
【ポイント2】「情報技術」の株価は堅調
「エネルギー」の株価は出遅れが目立つ■情報技術」セクターの株価は、2016年8月以降堅調に推移しています。半導体・半導体製造装置の業績が、グローバル景気の回復と世界的な半導体需要の拡大から好調に推移していることなどが背景です。
■「エネルギー」セクターは、大幅な増益見込みとなっていますが、利益水準の回復にはまだ時間がかかりそうです。株価も出遅れ感が目立ちます。
【今後の展開】株価下落の背景は米政治の混乱
景気刺激策の実施が遅れるとの警戒感>■トランプ大統領がコミー前連邦捜査局(FBI)長官に対し、ロシアとの不透明な関係が疑われたフリン前大統領補佐官に関する捜査を終えるよう求めたと伝えられました。トランプ大統領は9日に大統領選挙に対するロシアの干渉疑惑を捜査していたコミー氏を電撃解任し、15日には機密情報をロシア側に漏えいしたとの疑惑が浮上したばかりでした。FBIの捜査に圧力をかけたと受け取れる行動で米議会から批判が強まり「景気刺激策の実施が遅れる可能性がさらに高まった」との見方が米国株式の売りにつながったと思われます。
■投資家は運用リスクを回避する姿勢を強め、相対的に価格変動が小さく安全資産とされる米国債に資金をシフトさせたため、米長期金利は一時2.33%水準まで急低下し、景気改善や金利上昇が業績の追い風となりやすい金融株が集中的に売られ、相場を下押ししました。
景気、業績は堅調でいずれ落ち着きを取り戻すと期待<トランプ大統領は弾劾されるのか?>
■一部で懸念が上がっているトランプ大統領の弾劾については、その可能性はゼロではないと思われるものの、現時点では「証拠不十分」と言えそうです。米司法省は特別検察官を任命するなど、事実関係の究明に向けた取り組みが進みそうです。今後の進展には注意が必要です。
■コミー前FBI長官の更迭以降、トランプ大統領にまつわるネガティブ情報のリークが相次いでいることから、米政策当局内での反トランプ派が勢いを増しているとの見方があります。今後もトランプ大統領に対するネガティブな情報のリークが続くことが懸念されます。
<景気刺激策実施の遅れはどの程度か?、景気対策が出ない場合の成長率への影響は?>
■今後の議会との協議の進捗によると思われますが、景気刺激策の実施時期は、17年内から後ずれする可能性が高まったと思われます。
■仮に景気刺激策が出てこないとしても、過剰在庫があるわけではないため、企業のセンチメントがよほど急速に冷え込まない限りは、米経済が急速に悪化するリスクは低いと考えられます。また、世界経済全体が堅調なことも支えとなりそうです。米国景気は、景気刺激策が出てこなくても、2%程度の成長が続く見通しです。
<今後の株式市場の見通し>
■トランプ政権の政策運営の不安定さや景気刺激策の発動が遅れる可能性の高まりは、投資家のセンチメントの悪化につながりやすいのですが、実際の景気や業績に与える影響は限定的と考えられます。
■米国株式市場の株価収益率(PER)は、トランプ財政の期待を反映する形で18.0倍(3月1日)まで上昇しました。5月17日は17.3倍で、これが米大統領選挙直前の16.5倍台まで下落する可能性も拭えません。ただ、PERの修正を反映するとしても、企業業績の予想に変化がなければ、株価下落の余地は▲5%程度です。
■予想利益は堅調に推移しています。トランプ財政の効果に期待が集まりますが、その規模、実施のタイミングが定まっていないため、1株当たり予想利益に同政策の効果はあまり織り込まれていないと思われます。トランプ財政の遅れは1株当たり予想利益の修正にはさほどつながらないと考えられます。
■トランプ政権の政策運営の不安定さは続く可能性はありますが、米国の景気や企業業績の悪化には結びつきにくいと考えられることから、米国株式市場はいずれ落ち着きを取り戻すと期待されます。
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